大英博物館がマンガ・ワンダーランドだった奇跡の3ヶ月。

10/09/2019

ついにロンドンの日本文化ブームもここまできたか…

8月26日まで開催されていた特別展「Manga: at the British Museum」行ってきました。

企画展っていうから、なんか常設展示の日本コーナーの近くに四畳半みたいなスペースで細々とやってるものかと思うじゃないですか。

大間違い。

海外の企画展としては世界最大級の規模だそうです。


1:展示室も、内容も広かった。コンテンツのカバー力。

どこまでも奥深い漫画の世界。その制作過程、歴史、ジャンルの多様性に社会的影響まで、幅広くカバーでき、その上に展示物を海を越えたロンドンに集められた、大英博物館のキュレーション力に脱帽です。

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(↑特別展の様子。縦横無尽に広がるマンガの世界!)

展示されていた原画コレクションの中には、「鉄腕アトム」や「ブラックジャック」などを生み出した漫画の神様こと手塚治虫先生、「バカボン」や「おそ松くん」で知られる赤塚不二夫先生など、漫画というジャンルを確立させた先人の作品から、「聖⭐︎お兄さん」や「この世界の片隅に」といった最近の話題作のものまで幅広く網羅。

これだけの原画を集めるのに、どれだけの準備と、出版社・原作者との交渉があったか…感動です。

その他にも、そもそも漫画芸術の礎を築いた浮世絵や、アニメ化された作品の映像、漫画からインスパイアされた立体芸術や陶芸による作品など…さすが、「最大規模」の言葉に恥じない内容の濃さ。じっくり見て回ると軽く一時間半以上はかかりました。


2:こんな目線で読んだことなかったよ…大英博物館ならではの文化的探究心。

漫画から、日本文化そのものの理解を深めようとする姿勢が素晴らしい。

展示の前半には、現代の漫画作品と江戸時代の浮世絵を並べる展示がありました。日本人の私でも、浮世絵と漫画の類似性は今回の展示を見るまで気付きませんでしたが…筆使いや臨場感のある場面の切り取り方など、日本人の絵心のルーツってここにあるんだ…と新鮮な気付きがありました。

同じエリアには、全長17メートルもある「新富座妖怪引幕」も。歌舞伎の舞台で幕として使用されたそうですが、今にも飛び出してきそうな動きのある妖怪の浮世絵に、目は釘付け。まさに「ゲゲゲの鬼太郎」などの名作の原点がここにあるように感じました。

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漫画が社会全体に与えた影響を紹介するエリアでは、漫画風イラストを使った公共交通のポスターや、教育マンガなどが取り上げられていました。そういえば最近、日本に帰省するたびに駅のマンガ風ポスターを目にしたなあ…そういえば私もこどもの頃、ドラえもんの教育漫画でかけ算と割り算覚えたり、ちびまる子ちゃんの漫画で四字熟語覚えたりしてたなあ。歴史マンガも読んでたなあ…

想像以上に、漫画って日本人の生活に組み込まれているんだと実感できました。展示会全体を通して、「マンガのちから」に触れられた気がしました。


3:いやもう楽しすぎね。漫画愛が伝わる遊び心。

展示としても一流な上に、エンタメ性もあるのがすごいところ。このような展示会にあまり慣れていない客層も楽しめるように、ただ展示を見るだけではない工夫や仕掛けがたくさんありました。

たとえば、展示の冒頭で紹介されるのが、「日本最古の漫画」とも言われる「鳥獣戯画」。平安時代に描かれた絵巻なのですが…ここに登場する”うさぎ”が、今回の特別展の案内役。会場のいたるところで、このうさぎのイラストが登場して、展示物の解説や順路案内をしてくれます。

うさぎの案内で不思議の世界へ…ピンと来ました?

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(↑ショップで売っていた限定ハガキです♪)

イギリスが誇るファンタジー「不思議の国のアリス」をオマージュした構成になっているんですね。日本のポップカルチャーの特別展に、イギリス人になじみ深い童話を引用するってさすが、粋な構成ですよね。文化の融合を感じる工夫に、しょっぱなから感動しました。

中盤には、漫画本を自由に手にとって試し読みができるコーナーも。さながら、ロンドンに突如出現した漫画喫茶とでもいいましょうか(カフェエリアがあるとか泊まれるわけではないけど)。英語版も含めて数多くの漫画が、左右に二つ並んだ巨大な本棚にびっしり!「一日中ここにいたい!」と思ってしまいました。

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(↑本棚には常に人だかりが…!)

出口付近には、漫画風の記念写真がとれるブースがあり、特に家族連れや友達同士で写真を取ろうとする人たちの列ができていました。さらに、特設ショップでは取り上げられたマンガ作品のグッズのほか、日本のスナック菓子も置いてあり(ちなみにかなり高めの値段設定でした!笑)、物販まで幅広く網羅する大英博物館、隙なし…!

私自身、筋金入りのマンガファン…!というほどでも無いのですが、それでも新鮮な発見と学びの連続で、とても楽しい時を過ごせました。キュレーターさんたちのマンガ文化へのリスペクトも、ひしひしと感じました。普段なら来館しないような若者もたくさん展示に訪れたというニュースも納得です。

マンガを通して、日本文化と社会をみつめるこの企画が、他でも無い大英博物館で開催されていた、というのは、まさに”奇跡”といっていいのではないでしょうか。ロンドンの街中や地下鉄の駅で、あのゴールデンカムイのキャラクターをあしらったポスターが燦然と飾られていた2019年夏を、私は決して忘れないでしょう。

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