Fiddler on the Roof 「屋根の上のヴァイオリン弾き」

03/06/2019 Image Description

(↑PLAYHOUSE TEATREのチケット売り場。筆者撮影。)

どのミュージカルファンも必ず通る誤解だけど、主人公のおじさんがヴァイオリニストってわけじゃないんです。このお話。

19世紀末のロシアで、迫害と貧困の中でもしきたりに従って生きるユダヤ人の家族を描いた物語。「屋根の上でヴァイオリンを弾くように、絶妙なバランスで成り立っているユダヤ人の村社会」を比喩として表現したタイトルなんです。

幾度となく再演されている名作だけあって、ハードルも高いわけですが…今回のウエストエンド公演は、批評もかなり好評。早速、PLAYHOUSE THEATREに向かいました。

あらすじ

主人公のテヴィエは心優しく貧しい農家。牛を飼い、牛乳やチーズを売って暮らしています。ユダヤ教のしきたりを大事にし、厳格な奥さんの尻に敷かれ、5人の娘を愛しています。手塩にかけて育てた娘たちが一人、二人と恋に目覚めていく中、ロシア革命の波、迫害の足音が近づき…心温まる家族愛とやるせない人種差別の歴史が背中合わせになった人間ドラマです。

正直いって、きらびやかな「ザ・エンターテイメント!」が好きな方にはオススメできません。

でも。だからこそ。家族愛と男女の愛、伝統と改革、信仰と迫害など、様々なテーマが絡み合い、人間の真髄がにじみ出るような脚本は、文学的、いや哲学的といってもいいと思います。だからこそ、見た後の余韻がすごい。かといって、まるっきりシリアスかというとそうではなく、テヴィエさんの素朴なキャラクターは微笑ましいですし、笑いをとるシーンも意外と多いです。

お芝居と音楽をどっぷり堪能したい!という方に全力でおすすめしたい作品です。

(↑公式Trailer。数々の)

見事なセット・世界観

日本版よりも衣装やセットのデザインが暗く、より時代背景に忠実。その分、登場人物の内側から湧き上がる土臭いエネルギー、個性の彩りが際立つような気がしました。

細部まで作り込まれたセットも素晴らしかったなあ。劇場に入った瞬間から、19世紀末のロシア・ユダヤ人集落に足を踏み入れたかのように感じました。一階席に突き出すように仮設の通路が設置され、観客の真横を登場人物が通ったり、両端のボックス席のデザインも…もはやセットの一部に客席があるかのような没入感。あのボックス席で観劇したらメッッッチャ楽しそう。

名曲の数々

「Tradition」「Matchmaker」「If I Were a Rich Man」「Sunrise Sunset」など、ミュージカル界の「クラシック」と言っても過言ではない名曲たちが立て続けに披露される第一幕は、ファンにはたまらない展開。そしてオープニングで歌われる「Tradition」のあの特徴的なメロディー!終演後、脳みその中はあのメロディーでいっぱいになること間違いなしです。

「トラディショーーーーーン!トラディション!」

見終わったら一緒に歌いましょ。ウエストエンドキャストの重厚なハーモニーにも、鳥肌です。
そして、筆者個人的なツボ曲が、第二幕の「Do You Love Me?」という夫婦のデュエット。今までしきたりに縛られて厳格な父親を全うしようとしてきたテディエと、家事・子育てに追われて休む暇もなかった奥さんが、ふと立ち止まって二人の愛をたしかめ合う歌です。25年連れ添った仲の二人が醸し出す恥じらいと深い絆…もう、なんか、かわいい!シリアスな場面の多い第二幕の中にあって、とっても微笑ましい場面でした。

さて、最後は気になるチケットレポのお時間です。

ウエストエンドに登場して日が浅い作品なので人気も高く、割引チケットなどは見つかりませんでした。ということで今回は、朝10時にボックスオフィスに赴き、20ポンドの当日券を購入してみました…

Image Description (←)
ゲットした席は、「いやいや私たちが屋根の上に座ってどうするよ」と思うくらいにはものすごい傾斜のある3階席の端。

かなりたくさんのウエストエンドの劇場を訪れましたが、ここまで縦に高さのある劇場も珍しい気がします。自分たちの座席まで階段を降りるのが若干怖かったです。座ってみると、1階の舞台を覗き込むような感じ。

結論を先にいうと、この作品を確実にエンジョイしたいなら、少々奮発してでも1階席か2階席で見ることをおすすめします。

フロアの全席が「Restricted View」と書いてあったのでなんとなく予感はしていたのですが、一階席の通路での演出がほとんど見えないことも…とほほ…あと、作中に出てくるディディエの娘さんたち、3人とも衣装がほとんど似ているので、三階からだと誰が誰だかわからなくなり混乱(笑)
3階席での観劇なら、上手側(=舞台に向かって右側)の席の方が見やすそう。オペラグラスがあれば便利だし、ないならあらすじと登場人物を予習しておいたほうが良さそうです。

それにしても、ティディエさんが独白(=ひとり台詞)の場面でよく3階席の方に目線をくれたので、まるっきり芝居から無視されているような感覚はありませんでした。

………

重厚な世界観。土臭いエネルギーに満ち溢れた楽曲たち。これぞクラシック・ミュージカル。公演は9月末までと比較的短い公演です。早めに、ぜひ劇場で堪能してみてはいかがでしょうか?

公式ウェブサイトはこちら: https://fiddlerwestend.com/

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Image DescriptionE活

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